魔王 11

直人(生田斗真)にタロットカードが入った赤い封筒が届いた。
それを見た直人は、
「成瀬は、最後に俺を殺すつもりです」
そこに取り調べ中の兄の典良(劇団ひとり)から直人へ呼び出しがきた。
直人が複雑な表情で取調べ室に行くと、兄は弟の直人への劣等感を語り始め、
「俺はいつもお父さんの顔色はばかりうかがってきた、お父さんの事を頼む」
と言った後、タバコを買ってきてくれるよう直人に頼んだ。イヤな予感がした。
兄の典良は自分の懐から宗田殺害で使用したタバコ(青酸カリ入り)を取り出し、それを吸って自殺した。
突然のことに泣き叫ぶしかない直人。
駆けつけた栄作(石坂浩二)もショックで名前を呼び愛しそうに手にさわっていた。
兄からのメモの切れ端に書いた遺書には『迷惑かけて、申し訳ございません』
それを見た父の栄作は泣いていた。その姿はたしかに父親だった。そして、
「誰かの幸せの影には誰かの不幸がある、それが世の中、息子のためだと思っていた。私を許してくれ。私の間違いが典良を死に追いやってしまったんだ」
と自分の言動を悔いて、初めて息子に謝罪した。
直人は弱い父の姿に戸惑い部屋を出ようとした。その時、
「どんなことがあっても、お前達二人は私の息子だからな」
との父からの言葉。子にとっては一番言ってほしい言葉、父の本心はわかった。
ただそれを聞くことができたのは兄の死がキッカケ。
直人はただ泣くしかなかった。
成瀬は中西(三宅裕司)から典良の死を知らされ直人の件で頭を下げられた。
犯人の自殺は予想外のことだったよう。おどろいていた。
廊下で泣いている直人を見かけた成瀬。
復讐のための赤い部屋で写真を引きちぎり荒れていた。
予想外の展開や泣いている直人の姿を見ての自分の感情に大きく戸惑っていた。
父の栄作は息子を亡くした悲しみにくれながら典良の結婚式のアルバムを見ていた。
典良と直人と自分の三人並んで笑顔の写真だった。
典良うれしそう、直人おちゃめな弟笑顔、父しあわせ笑顔、家族をよく現していた。
涙を流しながら写真を見ている内に、胸の発作で苦しそうに倒れた。
直人は父の栄作が電話に出ないので不安になり実家に帰った。
するとそこには横になって倒れている栄作の姿があった。
兄の続いて、ようやく本心を知ることができて和解した父まで亡くなった。
直人の心は泣き叫ぶだけでは収まらなくなっただろう。
成瀬の方は待っていたしおり(小林涼子)から後ろから抱きつかれ、
「怖いんです、成瀬さんが心配で、あなたに何か起こりそうで、もうやめて下さい!」
と涙ながらに訴えられていた。
成瀬は一見無表情に腕をつかみ、悲しそうな目をして去った。
もう引き返すことができない。
そう心に決めていた成瀬には感情を抑えるだけで精一杯だった。
保釈が認められた葛西(田中圭)に成瀬は、
「暴行教唆で実刑になれば・・・少しの間だけでも愛する人を大事にしてほしい」
と自ら保釈金を払い葛西を保釈にした。
電話すると麻里(吉瀬美智子)は、芹沢家を出て葛西の部屋で待っている、と言った。
ところが、成瀬が葛西を保釈したと知った山野(清水優)は激しく怒り問いつめてきた。
成瀬から葛西への復讐はもう終わっていた。
「彼は充分苦しんだからもういいだろうと」
それに対して山野が、
「あいつも僕をいじめてた一人なんですよ!」
とさらに感情的になっていた。
成瀬は汚名を着せられて亡くなった英雄のために復讐、山野も同じ目的だったはず。
それが、山野は自分をイジメていた人達への復讐に変わってきていた。
「葛西は自分で仕留める」
と言ってナイフを出してきた。成瀬は、
「それでは英雄が止めた意味がなくなる」
と成瀬と山野が言い争いになった。
そして、成瀬の腹に山野の持ったナイフが刺さった!事故だった?
私の目には山野が感情的になって指したように見えていた。
成瀬は腹部を抑え血が出ているのを確認し、その場にしゃがみこんでしまった。
山野は取り乱しながら葛西の元に向かい、背中をナイフで刺した。
葛西はプレゼントを手に持って麻里への想いを感じながら、亡くなった。
山野は成瀬の復讐手伝いをしている内に殺人鬼になってしまった。
これも予想外の出来事だっただろう。
錯乱状態でナイフを振り回した山野は、警官に射殺されて終わった。
しおりは成瀬から預けられていた一通の手紙を渡された。
そこには、成瀬の事件後の心情やしおりへの想いが切々と語られていた。
「後戻りすることは出来ません。あと一人、どうしても死ななくてはいけない人間がいるんです。申し訳ありません。そして、今まで、ありがとう」
と別れを意味する言葉も書いてあった。
腹を刺されたまま公園で電話に出る成瀬、しおりからの電話はつながらなかった。
直人は無断で拳銃を持ち出していた。
その直人が成瀬に電話をして呼び出していた。
成瀬は腹の傷口を背広のボタンを留めて隠して現れた。顔も魔王に戻していた。
そこは、11年前に英雄が亡くなった事件が起きた現場、因縁の場所だ。
直人は成瀬に拳銃を向けながら、
「俺のせいで始まった復讐だ。俺の手で止めるしかないんだ!」
と叫んだ。その様子を見て微かに笑みを浮かべた成瀬。
早くとどめ指してほしがっているように見えた。
直人は震えて引き金を引けない。それを見た成瀬は、
「何を迷ってるんです?私はあなたの大切な人を奪った。法律では僕を裁けない、復讐のチャンスは今しかないんだ!早く僕を殺せ!」
叫んだ。その言葉に直人は、
「あんたの目的は、これだったのか・・・」
成瀬の最終的な目的は気づいた。
直人に自分を殺させ今度こそ人を殺した裁きを受けさせる、だった。
成瀬は直人の手を掴み、自分に銃口を向けさせた。
しかし、直人は
「あなたをそこまで苦しめたのは、俺です」
と引き金を引けずに拳銃を手から離してしまった。
直人が深い後悔と罪の意識からの苦悩を感じていること悟った成瀬。
でも、成瀬も自らが犯した罪に耐えられないほど苦しみ途中でやめられない。
「このままじゃ、自分が自分を許せない」
成瀬は拳銃を拾い上げ自分のこめかみに銃口を当てた。自殺しようとしたのだ。
直人が止めに入り、銃を巡ってもみ合いになった。
その瞬間、銃声が鳴り響いた。
もみ合いの中、直人の腹部に向って拳銃が誤射されていた。
11年前に直人と英雄の間に起こった悲劇が、また友雄を相手に変え起こってしまった。
苦痛でその場に倒れる直人。直人を抱きしめ成瀬は
「死ぬな芹沢!目を開けてくれ、死なないでくれ!」
と泣き叫んでいた。
この時の成瀬は真中友雄に戻っているように見えた。
直人へは英雄と同じような愛情を感じていたようにも見えた。
「生きて下さい、友雄さん、許してください、俺のことも、あなた自身も」
という言葉を残し直人は息絶えた。
11年間生きていく目的にしていた直人の死、それは魔王の死?
「許してくれ、僕のことも、あなたのことも」
成瀬もまた自らの過ちを悔やみ、心から謝罪した。
そして、英雄の遺品のハーモニカを直人の手に握らせゆっくりと目を閉じた。
しおりが駆けつけたときにはすでに遅く、二人は亡くなっていた。
その姿は、直人の肩に成瀬がもたれかかり、仲良く並んでいた。
最後の成瀬と直人の直接対決では、二人とも涙を流しながら謝りながらだった。
この復讐劇で、直人は同級生4人、父と兄、弁護士、記者を失った。
関係者で生き残っているのは、しおりと麻里だけになるのかな?
見返してから一番泣いたのは、兄の死で父が泣いているシーン。
11年前の事件を正当防衛にした張本人ではあったが、父の不器用な愛情からだった。
あらすじと簡単な感想だけと思っていたのに、ブログも長文になっていった。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます!
好きな芸能人の初主演ドラマが、ストーリーも切なかった「魔王」でよかった。